TK海浜幕張デンタルクリニック

関東歯内療法学会の学術大会

こんにちは。副院長の平沼です。
初ブログ投稿になります。
これからぼちぼち更新していければと思いますので、よろしくお願い致します。
1月も終わりに近づき寒くなってまいりましたので、みなさん風邪やこれから流行るであろうインフルエンザ、さらにはコロナウイルスなどには大いに気をつけてください。
僕は今年から毎日Rー1を飲んでいます。これが風邪予防に繋がっているかどうかはわかりませんが、今のところ風邪は引いておりません。うがい・手洗い・R-1です。
1年後も同じことを言っていたら、きっと効果があるのでしょうね。
まずは続けられるかどうかが問題です。
歯磨きも、風邪などウイルス感染の予防に効果的なようです。ということで皆さんしっかりと歯を磨きましょう。

それでは本題に入りたいと思います。
先日(1月26日)、秋葉原にて関東歯内療法学会の学術大会が行われました。
学会といえば大学病院での基礎研究の発表が多いイメージなのですが、今回は臨床医で著名な先生が多く登壇されるということで例年よりもかなり多く参加者が集まったとのことです。
僕が日頃からお世話になっている先生や、大学の先輩も登壇しておりました。
歯内療法学会は、根の治療の学会です。

関東歯内療法学会 会場内

そして今回のテーマは「再根管治療」。

ホームページ上でも書いていますが、根の治療は大きく2つに分けられます。
・大きな虫歯→根の治療(抜髄)

根管治療

・抜髄→感染→感染根管治療(再根管治療)
の2つのパターンが存在します。今回は後者の再根管治療がテーマです。

原理的には抜髄を行う際に無菌的な処置を行うことで、根管治療の成功率は9割を超えます。
しかし、日本の根管治療の質は諸外国と比べ非常に低いため、ほとんどの治療が再根管治療となっているのが現状です。
だいたい7割くらいが再根管治療でしょうか。
しかも最近はマイクロスコープを用いた治療が発展してきておりますので、抜髄はほとんどありません。
虫歯が神経まで到達していたとしても、感染した部分のみを取り除けば健全な神経は残せます。
なので当院においては抜髄が1割、再根管治療が9割といったところになるでしょうか。

再根管治療は抜髄と比べて、難易度が一気に高くなってしまいます。
なぜかと言うと、抜髄処置の最後にお薬(ガッタパーチャ+シーラー)を根の中に詰めるのですが、これを再治療の際に除去するのが非常に困難であるためです。
イタリアのリクッチ先生という著名なエンドドンティスト(根管治療専門医)の著書をみると、感染は歯とお薬との間に起こるそうです。
つまり古いお薬をしっかりと除去することができないと、感染源を取り除くことが困難ということです。

この感染源を除去する方法はいくつかありますが、まず第一に、マイクロスコープがないと全て取り除くことは不可能です。
なぜって、肉眼では見えないからです。
全てはマイクロスコープ下での処置を前提としたお話です。
方法としては、物理的に除去する以外に化学的に溶解・軟化させる方法もありますが、あまり推奨されません。
なのでほとんど物理的な除去になります。

具体的なやり方はホームページに書いてあります。
そして今回の学会ではそのお薬の除去にテーマを絞り、講演が行われておりました。

色々と勉強になることはありましたが、基本的な手技はあまり発展していないようです。
先ほど申した通り、根管治療の基本は物理的な汚染除去が第一なので、ツールの発展に依存するところが大きいのです。
しかし講演の中で気になる論文がありましたので紹介させていただきます。

2018年のGustavo De-Deusというブラジルのエンドドンティストが書いた論文です。
XPエンドシェーパーという器具と、従来の超音波洗浄を、どの程度汚れが落ちるか比較した論文

エンドシェーパー

です。

結論:
XP-endo FinisherとPUI(超音波洗浄)グループで62.67%と62.66%の減少がそれぞれ見られたため、両プロトコルは楕円形の根管からのAHTD(根管内デブリ)の除去に対して同様の効果を示した(P < 0.05)

根幹内デブリ

(中略)

現在までに、XP-endo Finisherを使用した洗浄および殺菌を評価する調査では、肯定的な結果が示されている。この器具は、洗浄のソリューションをより活発にするための興味深い代替手段としての地位を示しており、他の技術と同様に効果的に機能する。
(引用改変) Clin Oral Investig. 2019 Jul;23(7):3087-3093. doi: 10.1007/s00784-018-2729-y. Epub 2018 Nov 12.
Micro-CT comparison of XP-endo Finisher and passive ultrasonic irrigation as final irrigation protocols on the removal of accumulated hard-tissue debris from oval shaped-canals.
De-Deus G1, Belladonna FG2, de Siqueira Zuolo A2, Perez R2, Carvalho MS2, Souza EM3, Lopes RT4, Silva EJNL5.

ということでした。
この器具自体の存在は知っていたのですが、もう少し臨床データが出てきたら使うかどうか検討しようと考えていました。
超音波等々の器具で十分に汚染物質の除去はできていたため、必要性を感じなかったためです。
そして論文にありますように、超音波洗浄と同程度の結果です。
使うとしても、シーンによって使い分けるような感じになりますでしょうか。

先ほども申し上げた通り、根管治療の発展はツールの発展と共にあります。
マイクロスコープの普及と同時に急速に発展した精密根管治療はこれからどのような発展を見せるのでしょうか。
他分野で開発が進んでいるデジタル領域がこの分野に介入してくると、また面白いことが起こりそうな気がします。

しかし何度も言うようですが、神経は抜かずに保存することが第一です!
神経を保存することで歯の寿命も長くなります。
特に奥歯を抜髄してしまうと、歯根破折のリスクが大きく高まります。
神経は、大きな虫歯があっても保存が可能になってきています。安易に神経を取る治療をしてしまわないよう、願っています。